こんにちは、IT企業でプロダクトマネージャーとして働いているmaryです。そして、日々のビジネス分析経験を活かして、投資の世界でも数値を読み解く力を身につけてきました。
今回は、私自身が投資を始めた際に「もっと早く知りたかった」と心から感じた基本指標について、皆さんと一緒に深く学んでいきたいと思います。さらに、この記事を読み終えた時、あなたも自信を持って企業分析ができるようになっているはずです。

投資初心者が必ず通る道:「どの株を買えばいいの?」
あなたは株式投資を始めようと思った時、こんな疑問を抱いたことはありませんか?
「この株は割安なのか、割高なのか?」
「企業の収益性って、どうやって判断すればいいの?」
「同じ業界の他の会社と比べて、この会社はどうなんだろう?」
「なぜあの会社の株価は上がり続けているのか?」
「友人が勧めてくれた銘柄、本当に良い投資なのか?」
実は、私も投資を始めた当初は全く同じ疑問を抱いていました。また、証券会社のアプリを開いても、並んでいる数字の意味が分からず、結局は「なんとなく有名な会社だから」という理由で投資先を決めてしまっていたのです。
しかし、そんな状況を変えてくれたのが、今回ご紹介するPER、PBR、ROEという3つの指標でした。これらの「物差し」を理解することで、より合理的な投資判断ができるようになったのです。
なぜこの3つの指標が投資の世界で重要視されるのか?
投資の世界では、感情や憶測ではなく、客観的なデータに基づいた判断が成功の鍵となります。
例えば、あなたが中古車を購入する場面を想像してみてください。車を選ぶ際、以下のような要素を必ず確認しますよね?
- 車種とメーカー:信頼性や人気度
- 年式:どれくらい古いか
- 走行距離:どれくらい使用されているか
- 価格:他の似たような車と比べて適正か
- 事故歴:過去にトラブルがなかったか
- メンテナンス状況:しっかりと手入れされているか
同様に、株式投資も全く同じです。企業という「商品」を購入する際に、その企業の「価値」を客観的に測る指標が必要なのです。
PER(株価収益率)は、その企業の株価が利益に対して適正な水準にあるかを教えてくれます。
PBR(株価純資産倍率)は、企業の資産価値に対して株価が妥当かどうかを示します。
ROE(自己資本利益率)は、経営陣がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを表します。
したがって、これらの指標を理解することで、より合理的で成功確率の高い投資判断ができるようになります。
1. PER(株価収益率):その株価は適正?徹底解説

PERの基本概念
「この会社の株価は、利益に対して高すぎない?安すぎない?」
これがPERで分かることです。PERは「Price Earnings Ratio」の略で、株価が1株当たりの純利益の何倍になっているかを示す指標です。
計算式:PER = 株価 ÷ 1株当たり純利益
具体例でPERを完全理解しよう
例1:テクノロジー企業A社とB社の比較
- A社:株価2,000円、1株当たり純利益100円 → PER = 20倍
- B社:株価1,500円、1株当たり純利益50円 → PER = 30倍
どちらが割安でしょうか?
答えはA社です。なぜなら、同じ100円の利益を得るために、A社なら2,000円の投資で済むのに対し、B社では3,000円の投資が必要だからです。
例2:より実践的な例
さらに、トヨタ自動車の株価が2,500円、1株当たり純利益が250円だとします。
PER = 2,500 ÷ 250 = 10倍
これは「投資した金額を、利益で10年かけて回収できる」という意味です。
PERの判断基準:業界比較の重要性
ここで重要なのは、「PER = 20倍は高い」とは一概に言えないということです。なぜなら、業界によって適正なPERは大きく異なるからです。
業界別PERの目安
- 成熟した銀行業界:PER 8-15倍程度
- 理由:安定しているが成長性は限定的
- 例:三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ
- 電力・ガス業界:PER 10-15倍程度
- 理由:規制業界で安定しているが成長性は低い
- 例:東京電力、関西電力
- 製造業(自動車):PER 8-12倍程度
- 理由:景気に左右されやすく、設備投資が大きい
- 例:トヨタ自動車、ホンダ
- 成長期のIT業界:PER 20-40倍程度
- 理由:将来の成長性に期待が込められている
- 例:サイバーエージェント、メルカリ
- バイオテクノロジー業界:PER 50倍以上も珍しくない
- 理由:将来性は高いが、現在の利益は少ない
- 例:そーせいグループ、ペプチドリーム
PERを使った実践的な投資判断方法

ステップ1:同業他社との比較
気になる企業のPERを調べたら、必ず同業他社3-5社と比較してください。
例:ソフトバンクグループ(PER 15倍)を分析する場合
- NTT:PER 12倍
- KDDI:PER 13倍
- 楽天グループ:PER 25倍
この場合、ソフトバンクグループは業界平均よりもやや高めの評価を受けていることが分かります。
ステップ2:過去の推移を確認
その企業の過去3-5年間のPERの推移を確認してください。
- 現在のPERが過去と比べて異常に高い場合:株価が上がりすぎている可能性
- 現在のPERが過去と比べて異常に低い場合:何らかの問題があるか、割安な可能性
ステップ3:業績予想も考慮
来期の業績予想を使って「予想PER」も計算してみてください。
現在PER 20倍でも、来期利益が2倍になる予想なら、予想PER 10倍となり、実は割安かもしれません。
PERの注意点とリスク
注意点1:赤字企業はPERが計算できない
1株当たり純利益がマイナスの企業は、PERが計算できません。このような企業は他の指標で判断する必要があります。
注意点2:一時的な利益でPERが歪む場合
企業が不動産売却などで一時的に大きな利益を得た場合、PERが異常に低くなることがあります。この場合、実際の事業の収益性を正しく反映していないので注意が必要です。
注意点3:成長株と割安株の違い
- 成長株:PERが高くても、将来の成長性を考えると適正な場合がある
- 割安株:PERが低くても、業績が悪化傾向にある場合は注意が必要
2. PBR(株価純資産倍率):会社の「解散価値」から見た株価

PBRの基本概念
「もしこの会社が今解散したら、株主にはいくら戻ってくるの?」
これがPBRで分かることです。PBRは「Price Book-value Ratio」の略で、株価が1株当たりの純資産(帳簿価値)の何倍になっているかを示す指標です。
計算式:PBR = 株価 ÷ 1株当たり純資産
純資産とは何か?完全理解
純資産を理解するために、企業の貸借対照表を簡単に見てみましょう。
貸借対照表の構造
資産 = 負債 + 純資産(自己資本)
具体例:架空の会社C社の場合
- 資産:1,000億円(現金、土地、建物、設備など)
- 負債:600億円(借入金、未払金など)
- 純資産:400億円(資産 – 負債)
発行済み株式数が1億株の場合:
1株当たり純資産 = 400億円 ÷ 1億株 = 400円
もし株価が800円なら:
PBR = 800円 ÷ 400円 = 2.0倍
これは「会社を解散して資産を売却しても400円しか戻ってこないのに、株価は800円で取引されている」という意味です。
1倍を基準に考えるPBRの判断基準
PBR < 1倍:理論的には「お買い得」
PBRが1倍を下回る場合、理論上は会社を解散して資産を売却した方が株主にとって有利ということになります。
例:株価500円、1株当たり純資産600円 → PBR = 0.83倍
この場合、「なぜ市場はこの会社を純資産よりも低く評価しているのか?」を考える必要があります。
考えられる理由
- 業績が悪化している
- 将来性に不安がある
- 資産の実際の価値が帳簿価値より低い
- 業界全体が衰退期にある
PBR > 1倍:将来性への期待
PBRが1倍を上回る場合、投資家は「この会社の将来性は純資産の価値を上回る」と判断していることになります。
例:株価1,200円、1株当たり純資産600円 → PBR = 2.0倍
この場合、投資家は「この会社の将来性は純資産の2倍の価値がある」と期待していることになります。
業界別PBRの特徴
製造業(自動車、鉄鋼など)
- PBR 0.8-1.2倍程度
- 理由:多くの有形資産(工場、設備)を持つため
IT・サービス業
- PBR 2-5倍程度
- 理由:有形資産は少ないが、技術力や顧客基盤などの無形資産が価値を持つ
不動産業
- PBR 0.6-1.0倍程度
- 理由:土地や建物という有形資産が中心
銀行業
- PBR 0.3-0.6倍程度
- 理由:貸倒れリスクがあるため、純資産より低く評価される傾向
PBRを使った実践的な投資戦略

バリュー投資戦略
著名な投資家ウォーレン・バフェットも愛用する手法です。
- PBR 1倍未満の銘柄を探す
- なぜ1倍未満なのか理由を分析
- 一時的な要因なら投資チャンス
- 構造的な問題なら避ける
具体例:コロナ禍での航空株
2020年のコロナ禍で、多くの航空会社のPBRが1倍を大きく下回りました。
- ANAホールディングス:PBR 0.4倍程度まで下落
- JAL:PBR 0.3倍程度まで下落
「コロナは一時的な要因で、いずれ旅行需要は回復する」と判断した投資家は、大きな利益を得ることができました。
実際の企業事例で理解を深める
事例1:トヨタ自動車
- 株価:2,500円
- 1株当たり純資産:2,000円
- PBR:1.25倍
解釈:投資家は「トヨタの技術力、ブランド力、将来性は純資産の1.25倍の価値がある」と評価
事例2:ソフトバンクグループ
- 株価:6,000円
- 1株当たり純資産:8,000円
- PBR:0.75倍
解釈:「投資先の評価が難しく、純資産通りの価値があるか疑問視されている」
実際、ソフトバンクグループは多くの投資先企業を持っており、その真の価値を測るのが困難なため、PBRが1倍を下回ることが多いです。
PBRの注意点とリスク
注意点1:資産の時価と帳簿価値の差
企業の帳簿上の資産価値と実際の市場価値は大きく異なる場合があります。
例:
- 30年前に購入した土地:帳簿価値1億円、現在の市場価値5億円
- 最新の設備:帳簿価値2億円、実際の売却価値5,000万円
注意点2:無形資産の価値
現代の企業価値は、有形資産よりも無形資産(ブランド、技術、人材など)によって決まることが多くなっています。
- 有形資産:比較的少ない
- 無形資産:ブランド、技術、顧客基盤など膨大な価値
これらの企業のPBRは非常に高くなりますが、それは無形資産の価値が反映されているためです。
注意点3:業界特性の理解
前述したように、業界によってPBRの水準は大きく異なります。IT企業のPBR 3倍は普通でも、製造業のPBR 3倍は異常に高いと言えます。
3. ROE(自己資本利益率):経営陣の「腕前」を測る最重要指標

ROEの基本概念
「この会社の経営陣は、株主のお金を効率的に使って利益を生み出しているか?」
これがROEで分かることです。ROEは「Return On Equity」の略で、自己資本(株主資本)に対してどれだけの利益を生み出したかを示す指標です。
計算式:ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
ROEを身近な例で理解しよう
あなたが友人に100万円を貸したとします。1年後に友人が110万円を返してくれたら、あなたの投資収益率は10%です。
ROEも同じ考え方で、株主が投資したお金(自己資本)に対して、企業がどれだけの利益を生み出したかを示します。
具体例:2つの企業の比較
D社の場合
- 自己資本:1,000億円
- 当期純利益:100億円
- ROE:100億円 ÷ 1,000億円 × 100 = 10%
E社の場合
- 自己資本:500億円
- 当期純利益:100億円
- ROE:100億円 ÷ 500億円 × 100 = 20%
同じ100億円の利益を生み出していても、E社の方が少ない自己資本で同じ利益を生み出しているため、経営効率が高いと言えます。
ROEの判断基準:世界標準で考える
国際的な判断基準
- ROE 5%未満:効率が悪い
- ROE 5-8%:平均的
- ROE 8-15%:良好
- ROE 15%以上:非常に優秀
日本企業の特徴
日本企業は長年、ROEが低いことで知られていました。
- 1990年代-2000年代:平均ROE 5%程度
- 2010年代以降:平均ROE 8-10%程度(改善傾向)
これに対し、米国企業の平均ROEは15-20%程度と高水準を維持しています。
なぜROEが重要なのか?投資家目線で考える
銀行預金との比較
現在の銀行預金金利は0.001%程度です。ROE 10%の企業は、その10,000倍の効率で利益を生み出していることになります。
債券投資との比較
10年物国債の利回りが1%程度の現在、ROE 10%の企業は国債の10倍の効率で利益を生み出しています。
複利効果の威力
ROE 15%の企業に長期投資した場合、理論的には約5年で投資額が2倍になります。
- 1年目:100万円 → 115万円
- 2年目:115万円 → 132.25万円
- 3年目:132.25万円 → 152.09万円
- 4年目:152.09万円 → 174.90万円
- 5年目:174.90万円 → 201.14万円
ROEを分解して理解する:デュポン分析

ROEは以下の3つの要素に分解できます:
ROE = 売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
売上高純利益率(利益効率)
- 計算式:純利益 ÷ 売上高
- 意味:売上からどれだけの利益を生み出せるか
総資産回転率(資産効率)
- 計算式:売上高 ÷ 総資産
- 意味:資産をどれだけ効率的に使って売上を生み出すか
財務レバレッジ(財務戦略)
- 計算式:総資産 ÷ 自己資本
- 意味:どれだけ借入れを活用しているか
実際の企業事例でROEを分析
事例1:ファーストリテイリング(ユニクロ)
- ROE:約15%
- 売上高純利益率:約8%
- 総資産回転率:約1.2回転
- 財務レバレッジ:約1.6倍
解釈:高い利益率と適度な財務レバレッジで高ROEを実現
事例2:アマゾン(参考)
- ROE:約20%
- 売上高純利益率:約5%
- 総資産回転率:約1.5回転
- 財務レバレッジ:約2.7倍
解釈:利益率は低いが、高い回転率と財務レバレッジで高ROEを実現
ROEの注意点とリスク
注意点1:過度な借入れによる高ROE
財務レバレッジを高めすぎて高ROEを実現している企業は、景気悪化時にリスクが高まります。
危険な例
- 自己資本:100億円
- 借入金:900億円
- 純利益:20億円
- ROE:20%
この企業は高ROEですが、借入金が多すぎるため、金利上昇や売上減少時に大きな問題となる可能性があります。
注意点2:一時的な利益による高ROE
不動産売却益や投資有価証券売却益などの一時的な利益で高ROEを実現している場合、持続性がありません。
注意点3:自社株買いによるROE向上
自社株買いで自己資本を減らしてROEを向上させている企業もあります。これは必ずしも悪いことではありませんが、本業での効率向上とは異なります。
ROEを使った銘柄選択の実践方法
ステップ1:ROE 10%以上の企業をスクリーニング
証券会社のツールを使って、ROE 10%以上の企業を抽出します。
ステップ2:過去5年間の推移を確認
一時的な高ROEでないか、継続的に高水準を維持しているかを確認します。
ステップ3:デュポン分析で要因を分析
どの要因で高ROEを実現しているかを分析し、持続可能性を判断します。
ステップ4:同業他社との比較
同業他社と比較して、相対的に優位性があるかを確認します。
実践編:トヨタ自動車で3指標を総合分析
実際の企業を例に、これらの指標をどのように組み合わせて分析するか見てみましょう。
トヨタ自動車(2024年3月期)の分析
基本データ
- 株価:2,500円(分析時点)
- 1株当たり純利益:250円
- 1株当たり純資産:2,000円
- 自己資本:25兆円
- 当期純利益:3兆円
PER分析
- PER:2,500円 ÷ 250円 = 10倍
- 自動車業界平均:8-12倍
- 判断:業界平均の範囲内で適正
PBR分析
- PBR:2,500円 ÷ 2,000円 = 1.25倍
- 自動車業界平均:0.8-1.2倍
- 判断:やや高めだが、ブランド力を考慮すると妥当
ROE分析
- ROE:3兆円 ÷ 25兆円 × 100 = 12%
- 自動車業界平均:8-10%
- 判断:業界平均を上回る優秀な水準
総合判断
トヨタ自動車の投資判断
ポジティブ要因
- ROE 12%と高い収益性
- 世界的なブランド力
- 電動化への対応力
- 強固な財務基盤
リスク要因
- PBRがやや高め
- 自動車業界の成熟化
- 電動化への大規模投資が必要
結論:安定した高収益企業として長期保有に適していると考えられます
最後に:投資は「学習」と「実践」の積み重ね
投資の世界に「絶対」はありません。市場は常に変化し、企業の状況も日々変わっています。
しかし、今回ご紹介したPER、PBR、ROEという3つの指標を理解することで、感情に左右されない、数値に基づいた投資判断ができるようになります。
私の投資体験から学んだこと
私自身も、これらの指標を学んだことで、投資に対する不安が大きく減り、より冷静な判断ができるようになりました。
失敗体験から学んだこと
- 感情的な投資判断は必ず失敗する
- 「みんなが買っているから」という理由での投資は危険
- 短期的な株価変動に一喜一憂しない
成功体験から学んだこと
- 数値に基づいた分析は成功確率を高める
- 長期的な視点での投資が最も重要
- 継続的な学習が投資成果を向上させる
投資を始める前の心構え
リスク管理の重要性
投資には常にリスクが伴います。以下の点を必ず守ってください:
- 投資は余剰資金で行う
- 分散投資を心がける
- 投資金額は資産の一定割合以内に留める
- 損失が出ても生活に支障がない範囲で投資する
継続的な学習の重要性
投資の世界は常に変化しています:
- 定期的に投資の勉強を続ける
- 成功している投資家の本を読む
- 投資セミナーや勉強会に参加する
- 投資仲間とのネットワークを構築する
あなたの投資ライフが成功することを願って
この記事を通じて、投資の基本的な考え方と実践的な分析手法をお伝えしました。これらの知識を活用して、あなたの投資ライフがより充実したものになることを心から願っています。
投資は一朝一夕で成功するものではありません。しかし、正しい知識と継続的な努力により、長期的に資産を形成することは十分可能です。
一歩ずつ着実に学習を続け、経験を積み重ねながら、あなたなりの投資スタイルを確立してください。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。皆さんの投資ライフが成功で満たされることを心から応援しています。
投資は自己責任で行ってください。この記事の内容は投資の参考情報であり、投資の推奨や保証を行うものではありません。投資判断は必ずご自身で行い、十分な検討とリスク管理を心がけてください。