プロダクトの優先順位を決めるフレームワークを試してみた結果
~新人PdMが実践!RICE、Kanoモデル、価値vsコスト分析を徹底比較~
皆さん、こんにちは!
メガベンチャーでPdMとして奮闘中の若手PdMです。
PdMの重要な仕事の一つに、プロダクトの優先順位付けがあります。
限られたリソースの中で、どの機能を優先的に開発するべきか、どのバグを修正するべきか、どの改善を行うべきか、常に頭を悩ませていますよね。
私も日々、その難しさに直面しています。
そこで今回は、巷で話題の優先順位付けフレームワークを実際に試してみた結果を共有したいと思います。
もしかしたら、皆さんも抱えている悩みを解決するヒントになるかもしれません。
なぜ優先順位付けが重要なのか?
そもそも、なぜプロダクトの優先順位付けが重要なのでしょうか?
それは、限られたリソースを最大限に活用し、ユーザーに最大の価値を提供するためです。
開発リソースには限りがあります。
開発チームの人数、時間、予算は有限です。
その中で、すべての要望に応えることは不可能です。
だからこそ、優先順位付けを行い、最も重要なものから順に開発を進める必要があるのです。
優先順位付けを誤ると、どうなるでしょうか?
- ユーザーにとって重要度の低い機能ばかりが開発され、ユーザーの満足度が低下する
- 開発コストが膨らみ、収益が悪化する
- 開発チームのモチベーションが低下する
このような事態を避けるためにも、適切な優先順位付けはPdMにとって必須のスキルと言えるでしょう。
今回試してみたフレームワーク
今回は、以下の3つのフレームワークを試してみました。
- RICE分析
- Kanoモデル
- 価値vsコスト分析
これらのフレームワークを、現在開発中のプロジェクトに適用し、それぞれのメリット・デメリットを検証してみました。
プロジェクトの概要
今回、これらのフレームワークを適用したプロジェクトは、社内コミュニケーションツールの開発です。
このツールは、社内の情報共有、コミュニケーション活性化、業務効率化を目的としています。
現在、以下の機能の開発を検討しています。
- チャット機能:テキスト、画像、ファイルなどを共有できる
- ビデオ会議機能:オンラインで会議ができる
- タスク管理機能:プロジェクトの進捗状況を管理できる
- アンケート機能:社内アンケートを実施できる
- お知らせ機能:社内のお知らせを配信できる
これらの機能を、それぞれのフレームワークを用いて優先順位付けしてみました。
RICE分析:定量的なデータに基づいた優先順位付け
RICE分析は、Reach(リーチ)、Impact(インパクト)、Confidence(確信度)、Effort(労力)の4つの指標に基づいて優先順位を決定するフレームワークです。
RICEスコア = (リーチ × インパクト × 確信度) ÷ 労力
各指標を数値化することで、客観的に優先順位を判断できる点が特徴です。
各指標の定義
- リーチ: その機能がどれだけのユーザーに利用されるか
- インパクト: その機能がユーザーにどれだけの影響を与えるか
- 確信度: その機能が成功する確信度
- 労力: その機能を開発するのにどれだけの労力が必要か
今回のプロジェクトへの適用
機能 | リーチ(人) | インパクト(1〜5) | 確信度(%) | 労力(人月) | RICEスコア |
チャット機能 | 1000 | 4 | 80 | 3 | 853.3 |
ビデオ会議機能 | 500 | 3 | 70 | 5 | 210 |
タスク管理機能 | 800 | 5 | 90 | 8 | 450 |
アンケート機能 | 300 | 2 | 60 | 2 | 180 |
お知らせ機能 | 1000 | 3 | 70 | 1 | 2100 |
→RICEスコアが高い順に、お知らせ機能、チャット機能、タスク管理機能、ビデオ会議機能、アンケート機能の順に優先順位が高いという結果になりました。
メリット
- 定量的なデータに基づいて優先順位付けができるため、客観的な判断が可能
- 各指標を数値化することで、開発による効果を具体的にイメージできる
- チーム内で共通認識を持ちやすい
デメリット
- 確信度を数値化する際には、主観的な判断が入るため、チーム内での認識のズレが生じる可能性もある
- 数値化が難しい要素がある(例:ブランドイメージへの影響)
- すべての要素を数値化できるわけではない
Kanoモデル:顧客満足度を考慮した優先順位付け
Kanoモデルは、顧客満足度と機能の充足度の関係性を分析し、機能を5つのカテゴリーに分類するフレームワークです。
- 魅力的品質(Delighters): 充足すれば満足度が大きく向上するが、充足しなくても不満にはつながらない品質
- 一元的品質(Performers): 充足すれば満足度が向上し、充足しなければ不満につながる品質
- 当たり前品質(Basics): 充足していても満足度は向上しないが、充足していなければ不満につながる品質
- 無関心品質(Indifferents): 充足しても不充足でも満足度に影響を与えない品質
- 逆品質(Reversals): 充足すると不満につながる品質
今回のプロジェクトへの適用
事前にユーザーインタビューを実施し、各機能に対するユーザーの意見を収集しました。
その結果を元に、各機能をKanoモデルの5つのカテゴリーに分類しました。
- 魅力的品質: ビデオ会議機能(ユーザーからは「ビデオ会議機能があれば、出張コストを削減できる」という意見があった)
- 一元的品質: チャット機能、タスク管理機能(ユーザーからは「チャット機能は必須」「タスク管理機能があれば、プロジェクトの進捗状況を把握しやすくなる」という意見があった)
- 当たり前品質: お知らせ機能(ユーザーからは「お知らせ機能はあって当然」という意見があった)
- 無関心品質: アンケート機能(ユーザーからは「アンケート機能はあってもなくても良い」という意見があった)
- 逆品質: なし
→Kanoモデルによると、魅力的品質であるビデオ会議機能を最優先で開発し、次に一元的品質であるチャット機能とタスク管理機能を開発するべきという結果になりました。
メリット
- 顧客満足度を考慮した優先順位付けができるため、ユーザー視点での開発が可能
- 各機能の重要度を視覚的に理解できる
デメリット
- ユーザー調査に時間と手間がかかる
- カテゴリー分類に主観的な判断が入る可能性がある
- 機能のカテゴリー分けが難しい場合がある
価値vsコスト分析:費用対効果を考慮した優先順位付け
価値vsコスト分析は、機能の開発によって得られる価値と、開発にかかるコストを比較し、費用対効果の高い機能から優先的に開発するフレームワークです。
今回のプロジェクトへの適用
機能 | 価値(1〜5) | コスト(人月) | 価値/コスト |
チャット機能 | 4 | 3 | 1.33 |
ビデオ会議機能 | 3 | 5 | 0.6 |
タスク管理機能 | 5 | 8 | 0.63 |
アンケート機能 | 2 | 2 | 1 |
お知らせ機能 | 3 | 1 | 3 |
→価値/コストが高い順に、お知らせ機能、チャット機能、アンケート機能、タスク管理機能、ビデオ会議機能の順に優先順位が高いという結果になりました。
メリット
- 費用対効果を考慮した優先順位付けができるため、ビジネス視点での開発が可能
- 開発コストを可視化することで、リソース配分の最適化を図ることができる
デメリット
- 価値を定量的に評価することが難しい場合がある
- 長期的な視点での価値を考慮する必要がある場合がある
3つのフレームワークを比較してみた結果
フレームワーク | メリット | デメリット |
RICE分析 | 定量的なデータに基づいた優先順位付け、客観的な判断が可能、チーム内で共通認識を持ちやすい | 確信度の数値化に主観的な判断が入る可能性、数値化が難しい要素がある |
Kanoモデル | 顧客満足度を考慮した優先順位付け、ユーザー視点での開発が可能、各機能の重要度を視覚的に理解できる | ユーザー調査に時間と手間がかかる、カテゴリー分類に主観的な判断が入る可能性 |
価値vsコスト分析 | 費用対効果を考慮した優先順位付け、ビジネス視点での開発が可能、開発コストを可視化することで、リソース配分の最適化を図ることができる | 価値の定量評価が難しい場合がある、長期的な視点での価値を考慮する必要がある |
結論:状況に応じてフレームワークを使い分けることが重要
今回、3つのフレームワークを試してみた結果、それぞれのフレームワークにメリット・デメリットがあることがわかりました。
そのため、状況に応じてフレームワークを使い分けることが重要だと感じました。
- 定量的なデータが揃っている場合や、チーム内で共通認識を持ちたい場合は、RICE分析
- ユーザー満足度を重視する場合は、Kanoモデル
- 費用対効果を重視する場合は、価値vsコスト分析
また、これらのフレームワークを組み合わせて使用することで、より多角的な視点から優先順位付けを行うことも有効です。
例えば、RICE分析で算出したスコアをKanoモデルのカテゴリー分けに反映させたり、価値vsコスト分析で算出した費用対効果をRICE分析のインパクト指標に反映させたりするなど、工夫次第でより精度の高い優先順位付けが可能になります。
最後に:優先順位付けはPdMの腕の見せ所!
プロダクトの優先順位付けは、PdMの腕の見せ所です。
今回ご紹介したフレームワークを参考に、ぜひ皆さんも自分自身のプロジェクトに合った優先順位付けの方法を見つけてみてください。
そして、ユーザーに最高の価値を提供できるプロダクトを創り上げていきましょう!